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国道16号第6話 少年と中学生


海底3人組
 海における最もポピュラーな乗り物は潜水艦であることは言うまでもないだろう。
しかし何故ほとんどの潜水艦が水鳥の形をしていのか、
となると知らない人が意外と多い。
 


潜水艦

 海における最もポピュラーな乗り物は潜水艦であることは言うまでもないだろう。しかし何故ほとんどの潜水艦が水鳥の形をしていのか、となると知らない人が意外と多い。
 海における最も快適な乗り物は潜水艦であることは言うまでもないだろう。しかし何故ほとんどの潜水艦が水鳥の色をしていのか、となると知らない人が意外と多い。
 海における最も速い乗り物は潜水艦であることは言うまでもないだろう。しかし何故ほとんどの潜水艦が水鳥の感触をしていのか、となると知らない人が意外と多い。
 意外と知られていないことが、やはりたいして意味のない事だと言うことを知っている人は意外と少ない。

つまり潜水艦が水鳥だったのだ。


けんじ やすあき さちこ

けんじ、やすあき、さちこの三人の中学生は盗み出した潜水艦で海底を東へと進んでいた。
 こめかみの心の割れ目が深くなる一方の彼らは街を捨て、遥か海の東に有ると言う、楽しくなる草で大人も子供も中学生でさえも幸せに、仲良く暮らしてる国を目指しているのだった。
 この海底ケーブルを辿れば間違いなくその国にたどり着くはずだとけんじはやすあきから聞いていた。いよいよだ、それを思うとけんじの心の割れ目も少し埋まった様な気がした。
 しかしそんなときアザラシがヌルンと現れた。アザラシは三つの欲求の使者だ。アザラシを見た者は激しくさいなまれてしまう。
 すでにやすあきとさちこは出来上がってしまっているようだ
 けんじは二人によって刺激される情念を必至に一人押さえながら食料として貯蔵されていた小魚を放出した。イルカを呼んでいるのだ。海では絶えずアザラシとイルカは激しい争いを繰り返している。そんなイルカにアザラシを追い払ってもらおうと言うのだ。
 速く、速くでないと…。けんじは一人もんもんと耐えなが海底の暗闇を見つめていた。


海豹

 欲求が不足しているとアザラシは思うのだ。
 三つの欲求の使者それがアザラシだ。世界は三つの欲求で動いている、これが彼らの理念だ。  そしてアザラシは欲求の更なる追求のために禁欲的な厳しい修行を行う、この一見矛盾した行為によって彼らは不足があってこその充足であると気が付くのだ。つまり我慢すればするほどご飯は美味しいと言うことだ。この真理にきずき欲求のなんたるかを知った海豹は修行を終え人の欲求を操作する術を身につける。そして欲求の使者としての布教活動に入るのだ。
 彼らの布教活動は3人一組で行われる、一人が一つの欲求を担当するのだ。そして彼らは術を大いに利用し海の中を欲求で満たしていった。
 しかし海の仲間達の中でイルカだけは彼らの理念を受け入れようとはしなかった。
 海流のように流れのままに生きるイルカは自己の能動性を支える欲求とは無縁の存在なのだ。
 しかしイルカも所詮独立した獣、いつかは欲求に目覚めるはずだとアザラシは思う。何せ世界は三つの欲求で動いているのだから。
海豹の布教は今日も続く。


海豚

 流れのままに生きるそれがイルカのやり方だ。
 全ては海の対流のように自然に、あらがうことなく流れて行くべきなのだとイルカは思うのだ。
 その為にイルカは小さな目先の欲求に振り回されず、自我をなるだけ押さえる生き方を選んできた。静かに流れるように。
 それは大きな種の中の一部として何も持たず、望まずただ電気信号のように生きる小魚たちの生き方だった。
 小魚に近づきたい、その思いがイルカに小魚を貪らせる。彼らを食べることで彼らの力を宿らせようと言うのだ。
 今日もイルカたちは小魚の生きる力を体内に取り入れるために小魚を食べ続ける。 
いつか海の一部として流れるために。


水鳥

 ママが帰って来た。
 水鳥達は懐かしいその大きな塊に駆け寄っていった。確かにそれはかつての彼らの大きくそして分厚い母親にそっくりだった。けれど言い様のない違和感を水鳥達は感じずにはいられなかった。今のママはいやな臭いがしているし、何より体が空洞だった。
 彼らのもとから母親が消えたのはちょうど海底に何処までも続く光る線が出来た頃だった。
 それから暖流と寒流が三回入れ替わった頃彼女はこうして戻ってきた。
 足紋は確かに彼らの母であることを告げていた、もはや疑う余地もなく水鳥達は彼女について行くしかなかった。
 実の所、彼らはそれ程多くのことを憶えてはいられない性質だったのだ。
 すでに彼らはいやな臭いと体の空洞を懐かしいとさえ感じ始めていた。
 そうママが帰って来たのだ。


小魚

 海底に差し込むわずかな光に体を反射させながら、小魚の群は海底を泳ぎ回っていた。
 彼ら一匹一匹は何の力も意識もたない。けれど彼らは互いを動物磁力で細胞のように機能させることで、あたかも群一つで一匹の魚のように暮らしていた。
 そしてさらに彼らは群れ同士でさえも動物磁力によって集合自我を作りだし、混じり合い塊となっていった。
 それは絶えず広がり続ける一種一匹という巨大な生き物の姿だった。
 やがて全ての海に彼らが広がった時星は一つの生き物となるのかも知れない。
 



 


   
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