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国道16号第4話 少年とキッズ


マザー・ベーコン
 冬、大きくしかし孤独なマザーは子ども求めて徘徊します。
自分と同じものに会いたい、彼女の大きく鈍く重い脳は鮮烈に彼女を突き動かすのです。
 



マザー・ベーコン

 冬、大きくしかし孤独なマザーは子ども求めて徘徊する。彼女の大きいけれども鈍い脳は子どもを産んだ記憶さえも教えてはくれないのに。自分と同じものに会いたい、彼女の大きく鈍く重い脳は鮮烈に彼女を突き動かす。
 ある街が見える丘で彼女の大きくしかもとても良く見える目は自分と同じものが街にいるのを見つける。彼女はどうしようもなく街に向かった。
 そこで彼女は彼女とは似ても似つかない小さく弱い、しかし自分と同じ目をしたものと出会った。
 しかし彼女にはそれで充分だったのかも知れない、彼女の大きくしかし良く見える目には生まれて初めて感じる染み込むような安堵感に震えていたのだから。


渡り鳥

 冬が近づくと鳥たちは一斉に北を目指して旅に出る。その旅は長く辛い。弱った物は切り捨てられ、迷った物は置き去りにされる。留まることは許されず、休むことさえかなわない。
 そんな旅の中で鳥たちは様々な光景を目にする。世界は驚異と戦慄に満ちている。しかし鳥たちはその中に入る事は出来ない。どんなにそこが魅力的でも留まることは許されず、休むことさえかなわなのだ。結局、鳥たちは旅人でありそれは永遠の傍観者を意味する。しかし鳥たちには目指すべき大地がある、それは鳥たちにとってどんな場所よりも素晴らしい所に違いない。
 今も彼らは永遠の傍観者として旅を続けている。


キッズ

 彼らは囚われていた。しかし何時から囚われていたのかと言うことは考えもしない。ただその小さな囚われの空間が彼らの世界だった。
 彼らは大きな目をしていた。しかしそれが自分の本当目なのか、被せられた偽りの目なのか考えもしない。ただ不必要に良く見えるその大きな目で見た歪んだ天井が彼らの世界だった。
 彼らは気づいていた。自分たちは餌にしか過ぎないことを。いつかとても大きなものが迎えに来ることを。だからといって何かをしようとは考えもしない。ただ悪戯にゆっくり流れる時間が彼らの世界だった。
 彼らは大きなものが迎えに来る時を楽しみにしていた。その時、自分たちの存在を理解できると考えていた。その思いだけが彼らの世界だった。


くっ付き人

 大きな軋み声をあげて彼の大地が動き出した。しかし彼は少しも動じる事も無くいつものように朝の食事を楽しむ。彼の腕は大地がどれ程傾いてもはがれる事はない、その腕をはがす事が出来るのは彼の意志だけなのだ。だから彼は大地が何処へ行こうともいつまでもその豊かな大地にむしゃぶり付いて居られる。
 彼は大地の外がどうなっているのかなどに興味はない。ただ右上の兄さんと左上の弟と、この大地があればそれで充分なのだ。人生を楽しむこつは多くお望まない事だと彼は知っていた。
兄さん今度はもう少し北に行こうよ、なんだかこの辺は最近美味しくないんだよ。
 彼は彼の大地が次第に力を吸い出されていると言う事に気づいてはいなかった。なぜなら彼は大地の外がどうなっているのかなどに興味はないのだから。


 その街はとても昔からあった。そして様々なものがそこに暮らしていた。なぜならその街にはエネルギーが通じていたからだった。エネルギーは多くのものを引きつけ、助け、守り、生み出していった。しかしある時街のエネルギーが途絶えた。エネルギーが無くなった街はやがて何も居なくなっていった。
 そして彼らが街にやってきた。あらゆるエネルギーを管理する「天使」たちが。
 天使たちは瞬く間に街にエネルギーを通すとまだ わずかに暮らしていたものを捕まえ、被せ、作り替えた街に閉じこめた。こうして街は巨大な牢獄になった。
 しかしそれはかつての街とたいしてして変わりはしなかった。


石弓三天使

 問題はエネルギーだと石弓三天使は思う。世界を支配しているエネルギーが不足しているのだ。多くの物が生まれすぎてエネルギーが分散してしまっているのだ。いかに多くのエネルギーを天使の元に集めるかそれが問題なのだ。つまりそれ以外は問題ではないのだ。
 大きい奴等、それが問題だと石弓三天使は思う。奴等はエネルギーを食いすぎるのだ。
 大きい奴等を捕まえて、そこからエネルギーを回収する、そのための天使、それが石弓三天使。
 彼らは絶えず三人一組で行動する。彼らの矢、電灯はエネルギーの多い所から少ない所エネルギーを流す力がある。
 天使たちはエネルギーを得る為にあらゆる事をする。しかしそれほど愛するエネルギーの使い方を彼らは考えた事が無い。



 


   
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