TOP WORK NEWS  MAIL PROFILE SOFTsan BLOG

国道16号第2話 少年とゴンドラ


3つこぶ丘発電所
止めどなく大地をはみながら3つこぶは
昔おじいちゃんに良く言われた言葉を思い出していました。
 何かを得るには何かを捨てなければならない。
 一体僕は何を捨てて何を得たのだろうか、彼は思うのでした。
 



三つこぶ

 何かを得るには何かを捨てなければならない。そう昔おじいちゃんに良く言われたのを彼は思い出していた。
彼の体は「造られて」しまって、あの頃のように自由に動く事は出来なくなってしまったけれど。今、彼のこぶの一つは大量のエネルギーを作っていた、もう一つのこぶは大きな街になっていた、最後の一つのこぶは厭な臭いのする黒い煙を吐き出していた。
 止めどなく大地をはみながら彼は思った、僕は何を捨てて何を得たのだろうかと、なにを捨てさせて何を得させているのだろうかかと。


しかしこの渋滞はなんだ。男は絶望的な気持ちでいた。機嫌を損ねた妻は何も語らず惚けたように海の毛並みを眺めていた。そして子供達は騒ぎ疲れて眠りについていた。
 事の始まりは妻からだった。入社以来休みも取らず働き続けた男がようやく手にした血と汗の五連休、それを三つこぶ丘発電所に行こうと言い出したのだ。
 三つこぶ丘発電所それは最近出来た超大型アミューズメントパーク、全てを得て全てを捨てる場所。こうして男の血と涙の五連休は家族サービスに捧げられることとなったのだ。
 あれから三日、男はまだ渋滞のまっただ中にいた。俺の血と汗と涙の五連休が、男は絶望した、そしてその絶望は男にある結論を導き出させた。捨ててしまえばいいんだ全部、そう一人言ちると男は車を海へと走らせ始めた。


 伝説の三つこぶ丘発電所を探して故郷を旅だってどれ位経ったのだろうか。目の前にそびえ立つ三つこぶを見上げながら船長は思った。
 しかし本当にあったとはな、船長は一人言ちた。
 三つこぶ丘発電所それは伝説の理想郷、全てを得て全てを捨てる場所。彼はその伝説を証明するために航海に出たのだ。
 色々あった、海の毛並みは困難を極め、十隻だった船団は次々遭難、座礁し今や五隻に、さらに終わりの見えない航海の不安は乗り組み員の反乱と言う形で船団を襲った。そして食料不足による脚気、劣悪な衛生状態による伝染病の蔓延、一つ目巨人の投石、どれも並の苦労ではなかった。
 けれど彼らはここまでやって来た、見つけたのだ伝説の三つこぶ丘発電所を。
 しかしあれは本当に理想郷なのか、船長は呟く。あの厭な臭いのする黒い煙は一体何なのだ。

 けれどもすでに船団は黒い煙にとけ込み始めていた。


三槍天使

 激しい空腹感が三槍天使達を包んでいた。
 飢え、それはエネルギー不足を意味する。これはエネルギーの管理者たる天使達には何より耐えられない事だった。
 速くエネルギーを補充しなければあれが起こってしまう。あれ…そうエネルギーゼロの状態、それは宇宙の止まってしまう時。たった一人の天使の死が世界の終わりを意味するのだ。
 こうしている間にも空腹感は増大し世界の危機も増大して行く。ちゅうちょしている暇はなかった、世界を救うのだ。
 天使長はついに食権を発動させた。天使達が喜びの雄叫びあげながら手短な獲物に槍をふるう。世界は救われたのだ。天使長はしばし思う。そして自らも槍を持って飛び立った。世界を救う為に。


ゴンドラ

 この電線は何処に繋がっているのだろう、全てはサトルのこの一言から始まった。
 先月、唯一の親友だった縞虫を事故で失ったサトルはその悲しみを忘れさせうる何かを探していたのだ。そして見つけた、街のいたる所にエネルギーを運んでいる電線、その先に何があるのだろうか。それは少年の冒険心を多いに擽った。
 そしてサトルには新しい友達もできた。サトルの計画を耳にした、双子の弟達に母を取られてしまった少女クリスと、脱糞癖のためクラスで疎まれている少年ジムが仲間になったのだ。傷を抱えた少年少女は街の片隅に捨てられていたゴンドラを直しついに旅に出た。きっと三つこぶ丘発電所につくんだよ、とジムが呟いた。
 三つこぶ丘発電所それは願えば何でも叶う魔法の国、全てを得て全てを捨てる場所。サトル思った、それじゃあ縞虫にまた会えるかなぁと。


大地

 彼女はただそこにいた、彼女のその豊かな毛並みは多くの生き物たちを育みそして殺していった。
 けれどそんな事は彼女にはどうでも良かった彼女はただそこにいるだけだった。
 彼女の上で暮らす彼らには余りにも時間がなかった、そして彼女には無限の時間があった。
 何もする必要は無かった。

 彼女は何時もただそこにいるだけだった。
 



 


   
3話に進む  Back